2012/05/14 17:14:00
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〜序章〜
広田陽介は待ち合わせ場所に指定した駅前の喫茶店でコーヒーを飲みながら、待ち人である「依頼主」を待っていた。
広田陽介45才。
この物語の主人公である。
職業は探偵。と、いってもほとんど依頼等なく、無職同然だった。
ただ、父親が所有していたマンションを半ば強引に譲り受け、家賃を収入源に特に苦労もなく気ままな生活を送っていた。
今回の依頼も、探偵業とは関係なく趣味として始めた寝取られ願望のある男の願いを叶えるべく待ち合わせをしたのだった。
今から35年前…父親の浮気が原因で両親が離婚し、母親に引き取られた。
広田少年10才の時だった。
母は幼い子供を育てる為、昼間はスーパーのレジ係、夜はキャバクラで働き生計を立てていた。
学校から帰って来ると、いつも「これで好きなものを買って食べてね」の書き置きと千円札がテーブルの上にあった。
最初の頃は何も言われない「自由な生活」を満喫していた。
だが、それも束の間…母親の愛情に飢えた少年は、宿題を持っては母親が夜働くキャバクラに訪れ、控え室に居るようになった。
家に居るときとは別人のような化粧に派手な衣装。
他の女性も薄着で化粧をする姿に、ドキドキしていた少年も、すぐに慣れてしまい、自分の居場所になってた。店に来てもうるさく言わない母に甘えるように毎日訪れていると、当時、一番キレイだと思っていた女性が、宿題を教えてくれたり、
母を尊敬してるとか、真面目な話や面白い話をしてくれるようになり…いつしか広田少年は恋心を抱くようになっていた。
店の人もまだ小学生だから。と、更衣室兼控え室の出入りを許してくれていたが、卒業と同時に裏口で待つようにと言われ、それきり店には近づかなくなった。
中学に入ると母親が居なくても寂しさを感じる事もなくなり、家で自由な時間を過ごしていた。
いつか…の「初恋の人」とも会わなくなり、高校生になった頃、母親に小遣いをせびろうと久しぶりにキャバクラへと向かった。
控え室へと続く裏口で待っていると、
「もしかして、陽介ちゃん?」と、通路から名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の方を向くと「やっぱりそうだ。ずいぶん大人になったねぇ。背もこんなに伸びて。いつの間にか私より高くなってる」
優しく声を掛けてくれたのは、初恋の久美子だった。
「いやぁ、本当に久しぶりですね。覚えててくれてたんですね」
と、話すと、声が低くなってるだの、一丁前に敬語を使ってるだの…冷やかしを浴びた再会だった。
続く。